最近「自己責任論」という言葉を聞きませんか?
簡単に言うと悪い結果を引き寄せたのは全てその人に理由があるというのが自己責任論です。
はたしてこの自己責任論は本当に正しいのでしょうか?
自己責任論とは
自己責任論とは、今のその人の立ち位置が全てその人の努力の結果によるものだとする考え方です。
どちらかというと良い結果よりも悪い結果の場合に言われます。
なぜ自己責任という考えが発生するのか
人は以下の状況に強い心理的不安を覚えます。
- 何も罪のない人が不当な扱いを受けること
- 悪い出来事が起こっているのに原因が不明なこと
この不安を手軽に解消できるのが自己責任論なのです。
例えば就職を失敗した人に対して、本人の努力不足が原因で本人がもっと努力していれば必ず成功できるというのが自己責任論の考え方です。
自由主義と自己責任論
自由主義と自己責任論というのはとても相性が良いです。
生まれたときから社会階級が決まっていた時代では、成功も失敗も身分のせい/おかげにできました。
しかし自由で平等な社会では、皆が同じ条件なんだから成功や失敗は本人の努力によってのみ変わるという考える人が増えてきました。
自己責任論は人々が自由に生きていることとの裏返しでもあるのです。
本当の自己責任論
自己責任論的な考え方では、全ての能力は誰でも努力すればするだけ伸ばせるという幻想が前提にあります。
しかしこれは半分は正解で半分は不正解です。
最新の行動遺伝学の研究では知能や性格等の遺伝と環境の影響の割合はだいたい50%程になることが分かっています。
つまり、
人生は遺伝が全てで決まる
人生は環境が全てで決まる
という極端な考え方は間違っていて、
人生は遺伝と環境(本人の努力)が半分ずつ程度影響しあって決まる
という考え方が真実なのです。
環境は遺伝とは違い自分で選ぶことができますが、未成年の場合では環境を自分で選ぶことは難しいので本人の努力で変えられる範囲は狭くなります。
自己責任論の弊害
自己責任論を鵜呑みにしてしまうと、全部自分が悪いのだという極端な考え方に走ってしまうことがあります。
自分が理不尽な扱いを受けた時に、なぜ自分は理不尽な目にあっているのかの理由がわからないと人間は強いストレスを感じます。
陰謀論やオカルトが流行るのは、それが荒唐無稽な事実であったとしても説明を与えてくれるからです。
ストレス小 | < | ストレス大 |
---|---|---|
全部自分が悪いから理不尽な目にあっている | 理由がわからず理不尽な目にあっている |
こうした思考停止は短期的にはストレスを減らす効果がありますが、長期的に見ると問題の真の原因にたどり着くことができないのでストレスの根本は消せないままです。
まとめ
本人の努力でどうにもならない部分も存在するので100%の自己責任論は間違っているということでした。
しかし本人の努力が実を結ぶのもまた事実なので、自己責任という言葉に縛られすぎずに向き合ってく必要があるのだと思います。